ビルの下でえんやこら
第2章 鏡
1歩外に出ると、そこは別世界だ。
入り口からは、雨の音だけが微かに耳に入り、それをかき消すように靴音が響く。
懐中電灯を片手に、エレベーターではなく、一番奥にある階段で上がる。
コツ、コツ、コツ、コツ……
ほぼ毎日、見回る暗いビルの中。なにも起きたことはないが、妙な緊張感が走る。1段1段上がり、2階へ。
安心するのは、非常口案内の緑の明かりだ。その下が、唯一、闇ではなくなる場所だった。
通路の右側には全て、小さな会社や、病院、なにかわからない事務所がある。左側には窓はあるが、隣のビルの壁に遮られ、昼間でも、ほぼ光が入ってこない。
あらかた進んで周りを照らすと、「うん、大丈夫」と次の階に上がる。
3階。
さきほど映像で見た、子供の姿が目に浮かぶ。
とたんに、キュッと体が縮こまる。
(まったく、なんてガキだ)
懐中電灯の光が小刻みに震えているのが、わかる。
たかが子供……と思っていたが、深夜の時間帯に真っ暗なビルの中を徘徊する子供なんて、まずいない。
このビルにお父さんでも、働いているのか?
それなら、すべて確認済みだ。
このビルには、警備員である自分達しかいない。
入り口からは、雨の音だけが微かに耳に入り、それをかき消すように靴音が響く。
懐中電灯を片手に、エレベーターではなく、一番奥にある階段で上がる。
コツ、コツ、コツ、コツ……
ほぼ毎日、見回る暗いビルの中。なにも起きたことはないが、妙な緊張感が走る。1段1段上がり、2階へ。
安心するのは、非常口案内の緑の明かりだ。その下が、唯一、闇ではなくなる場所だった。
通路の右側には全て、小さな会社や、病院、なにかわからない事務所がある。左側には窓はあるが、隣のビルの壁に遮られ、昼間でも、ほぼ光が入ってこない。
あらかた進んで周りを照らすと、「うん、大丈夫」と次の階に上がる。
3階。
さきほど映像で見た、子供の姿が目に浮かぶ。
とたんに、キュッと体が縮こまる。
(まったく、なんてガキだ)
懐中電灯の光が小刻みに震えているのが、わかる。
たかが子供……と思っていたが、深夜の時間帯に真っ暗なビルの中を徘徊する子供なんて、まずいない。
このビルにお父さんでも、働いているのか?
それなら、すべて確認済みだ。
このビルには、警備員である自分達しかいない。