ビルの下でえんやこら
第1章 警備員
夏の顔が覗く梅雨明けの7月中旬。時は深夜0時2分。この日はなぜか、昼過ぎからどしゃ降りが続いた。
街のはずれにある、5階建ての細いビル「しゃちほこビル」の1階に、彼らはいた。
そこは、1階の事務所。
ビルの管理人、昭玄武(あきつねたけし)45歳と、二人の警備員が事務所の奥の畳の間で、くつろいでいた。
「ほう、お兄さんは芸人さんかね。」
魚の漢字が入った湯飲みで、お茶をのみながら、武が一人の若い警備員に聞いた。
「はい、そらジローって名前でやらせてもらってます」
「漫才師?」
「いえ、いちおうピンで」
「ピンてのは、一人でやる芸かい? 落語か?」
「いや、一人でコント……まあ、喜劇みたいなことをやってるんすよ。管理人さん、お笑いって見ます?」
芸人、そらジローは、プラスチックのカップに入った、コーヒーに口をつける。
武は小さな木製の器に入った、金平糖を3粒ほど摘まんで、口に入れる。
「お笑い、見るよ。漫才のポプ子とピピ美はかわいいねぇ」
「ん~、まあ、あちらが先輩ですけど、事務所は違いますが……」
そう言うと、もう一人の長身で還暦を過ぎた警備員が、金平糖に手を伸ばしながら言った。
「1ヶ月ほど前、深夜の番組に出てましたわ。なんか、女が穿くような、ブルマやらパンティやらを被って、ギャーギャーわめいてはったわい」
街のはずれにある、5階建ての細いビル「しゃちほこビル」の1階に、彼らはいた。
そこは、1階の事務所。
ビルの管理人、昭玄武(あきつねたけし)45歳と、二人の警備員が事務所の奥の畳の間で、くつろいでいた。
「ほう、お兄さんは芸人さんかね。」
魚の漢字が入った湯飲みで、お茶をのみながら、武が一人の若い警備員に聞いた。
「はい、そらジローって名前でやらせてもらってます」
「漫才師?」
「いえ、いちおうピンで」
「ピンてのは、一人でやる芸かい? 落語か?」
「いや、一人でコント……まあ、喜劇みたいなことをやってるんすよ。管理人さん、お笑いって見ます?」
芸人、そらジローは、プラスチックのカップに入った、コーヒーに口をつける。
武は小さな木製の器に入った、金平糖を3粒ほど摘まんで、口に入れる。
「お笑い、見るよ。漫才のポプ子とピピ美はかわいいねぇ」
「ん~、まあ、あちらが先輩ですけど、事務所は違いますが……」
そう言うと、もう一人の長身で還暦を過ぎた警備員が、金平糖に手を伸ばしながら言った。
「1ヶ月ほど前、深夜の番組に出てましたわ。なんか、女が穿くような、ブルマやらパンティやらを被って、ギャーギャーわめいてはったわい」