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ビルの下でえんやこら

第1章 警備員

「ちょ、やめてくださいよ、サボさぁ~ん。あん時、三輪明宏さんがゲストで、僕、むちゃくちゃ言われたんですから……」

 サボさんと呼ばれる警備員、佐保
荒仁(サボ コウジン)は唇を軽く舐めながら、「たしか、お前さん、他の芸人さんと勝負して負けてたじゃねぇか。テレビ見て、情けなかったよ。相手はなんだっけ、安村とか」と返した。

「とにかく明るい安村さんでしょ。もう、大御所で師匠クラスですよ。いつまで、昔の芸引っ張ってるのか……なんで、あれが認められて僕がダメなんすかねぇ?」

 そらジローの話を聞いて、サボさんは笑った。

「そりゃ、お前さんのは変態が、コントやってるだけで、芸に工夫がないんだよ。最初に看護婦さんの姿で白衣着て、剣を持ったら変身するって、なにが面白いんだい」

 かさぶたになりかけた、そらジローの心の傷を、さらにえぐる。

 管理人の昭玄武は、冷蔵庫からなにやら四角い物を取りだし、卓袱台の上においた。ごま豆腐だ。

「お笑いのことはわからないけど、いよいよ限界に感じたんだったら、体をはるとか。この、ごま豆腐に潰したりんご飴を混ぜて食うとか」

「なんでりんご飴なんすか!」

 そらジローは、笑いながら言った。

「ほれ、お前さんより、管理人さんの方が面白いこと言うじゃねえか」とサボさんが茶化す。

「なにを言うんですか! そんなん食うたら、気持ちわるなって吐いてまいますやん。そんなんやったら、僕、明日からマーライオンて呼ばれますわ」

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