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ビルの下でえんやこら

第3章 家族

 どうやら、貞子は足に怪我を負ったようだ。

 それに無理矢理、数人がかりで後ろの車に、引きずるように乗せられている。抵抗しようにも、男の力相手では、どうしようもない。

 光希弥が、男にかかえられている。大声で泣いているのが、わかる。

 だが、おかしい。

 なぜ、他の一般の車が走って来ないのだ?

 この状況を誰一人として、見ていなかったと言うのか?

 サボさんは、見ることが出来なかった過去の現実を、貞子の目を通して確認できていた。

 なにかを嗅がされて、意識が無くなってくるようだ。貞子の目が、ゆっくりと閉じてくる。

 貞子は眠らされたようだ。だが、これを見ているサボさんの意識はあった。

「そうか……おそらく、やつらが高速道路の手前で工事かなにかがあると、他の車の進行を止めたんだ……やつらはあのくらいのことはするだろう」

 あくまで、憶測だが、BLのやりそうなことは、ある程度の予測は出来る。

 貞子が眠らされている以上、その目を通してなにも確認することが出来ないでいる。

「貞子を……光希弥を、どこに連れていこうとしてる?」

 目を閉じた貞子の体が、揺れている。まさか……とも思ったが、そういった行為をされているわけでもなさそうだ。

 なぜなら、両腕を後ろに回してくくられ、口にテープを貼られているのを感じる。それ以外はただ、座ってるだけの感覚しかなかった。

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