テキストサイズ

ビルの下でえんやこら

第3章 家族

 黒い大きな外車が、真後ろにいる。

 しかも、それは車間距離とは言えず、こちらが少しでもブレーキをかけようものなら、瞬く間に衝突事故を招いてしまう。

「スピードを上げるか」

 運転席のサボさんは、アクセルを踏み速度を上げた。

 すると、相手もスピードを上げてくる。

 やがて、その後ろから、もう1台、同じような車種の外車が、追い越してきた。しかも、微妙な距離を保ちながら、自分の車の前に来た。

(この時のは、覚えている……そうか、貞子からは、こう見えていたのか……)

 しかも、左側には巨大なトラックが、真横にピッタリとついてきた。

 あの当時、このトラックは、別のトラックかと思っていた。

 だが、違った。

 それは、貞子の記憶が教えてくれた。この3台はすべてグルだった。

 自分が追い越せないように、真横についたのだ。

 そして、前方の車が、少し間をあけた後、急ブレーキ。

 車は正面からぶち当たっていった。

 衝撃と恐怖、貞子が感じたものを、いまサボさんは繋いだ記憶から同じように感じ取っていた。

 フロントガラスは粉砕し、足下がプレスされたように挟まった。

 どこからか、人が……。

 おそらく、後ろの車にいた連中だろう。

 光希弥と貞子を車から出した。

(俺はグッタリしている……そうか、あれは、殴られたあとだ……)

ストーリーメニュー

TOPTOPへ