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ビルの下でえんやこら

第3章 家族

 ここで、すべてが遮断された。

 貞子は頭を抱えながら、踞っている。

「貞子……大丈夫か……」

 貞子は自ら記憶を消した。これ以上は思い出したくはないのだろう。

 サボさんは、ソッと、貞子の背中に手をそえた。

「やつらだな……やつらに、やられたんだな……」

 全身の血流が波立つように激しく動く。怒りだ。

 サボさんは、改めて、激しい怒りを抱いた。

 やつらがやったという、ハッキリとした、決定的な証拠。

 BlackLine、通称「BL」。やつらは、細々とだが、まだ動いている。

 主に麻薬密売や、悪徳商法、詐欺等を働いている。

 アジトは、このビルの近くだということも、突き止めている。

「まだ、時効にはさせん。させてたまるか」

 サボさんは、光希弥の肩を抱いた。

「お前の将来を潰したのは、俺の責任だ。なぜ、最後まで追い詰められなかったのか……」

 貞子は顔を上げた。

 長い髪の間から覗き見えるその表情は、あの頃の貞子だ。

 なぜか、笑っているように見えた。

「貞子、お前、やつらの顔は見てないのか? あの場所は、どこかわからないのか?」

 サボさんが、問いかけると、貞子はエレベーターのボタンに手をかけた。

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