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ビルの下でえんやこら

第3章 家族

「無理だよ奥さん、何重にも巻いたビニールテープだ。そう簡単にははずれません。どうだろう、彼にはずしてもらっては?」

 男は指をパチンと鳴らす。

「……ママ」

 光希弥の声だ。

 徐々に近付いてくる。

「光希弥……光希弥!!」

 その姿はうっすらだが、微かな明かりで見ることができた。

 光希弥が、身動きが取れない貞子の足にすがりついてくる。

「光希弥……大丈夫? ケガはない?」

 あの頃の光希弥だ。サボさんも、目頭を熱くする。

「いいかい、ぼくぅ~」

 男の声だ。

「いまから、3分の間に、ママの手に巻かれているビニールテープをはずすんだよ。もし、取れたら、ママ、助かるからねぇ」

「やめて!! 子供にそんな!!」

「おっと、もし、はずれたら、あんたはもちろん助けてやる。はずれなければ、あんたはここで埋まってもらう。どっちにしろ、子供は助けてやるただ、失敗した場合は、母親を見殺しにしたという重い十字架を背負ってもらうことに、なるだろうけどねぇ」

「酷い……だったら、私だけでいいでしょ。子供はもう帰して!!」

「さぁ、ここにタイマーがありまーす。ぼく、いいかい、ちゃんとテープをはずすんだよ」

 貞子が言うことには耳を貸さず、タイマーのスイッチを押した。

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