あたしの好きな人
第8章 新しい生命
翌日、泣き明かして眠り、すぐに朝がやって来る。
岳人と一緒に病院に向かう。
相変わらずのアットホームな雰囲気が、今はつらくて、
嫉妬心が芽生えた。
これから、麻酔して、お腹の中で死んじゃった、赤ちゃんを取り出す手術をする。
何度も説明されて、書類を書いて、もしも万が一、麻酔を使うから、
あたしが死んだ場合の書類にも、岳人が記入することになる。
要するに、麻酔を使うと、意識が戻らない時もあるから、一応のリスクは説明され、
そうなっても大丈夫ですか?
理解して下さい的な書類だった。
あたしは……不思議と落ち着いた気分だった。
自分が死ぬかもとか、麻酔で意識が戻らないかもとか、そんな不安はない。
それよりも、早く、赤ちゃんをなんとかしてあげて、
そんな思いでいっぱいだった。
どこかでまだ、実感が湧いてなかったかもしれない。
……ひょっとしたら、手術すれば、赤ちゃんは、死んでないのかもしれない。
勘違いだったとか。
手術すれば、赤ちゃんは治るかもとか、妙な期待があったんだ。
だから、自分の体の心配なんか、少しもしてなかったんだ。