あたしの好きな人
第8章 新しい生命
産婦人科だから、診察、触診する時の椅子に座って、両足を掛けて、
グイと広がる。
手術室とかテレビで見るようなのじゃ無いんだと、はじめて不安になった。
岳人の手術する前に見た、青ざめた表情を思い出す。
「……一緒には行かれないのか!」
「ごめんなさいね、出産ではないので……」
苦笑いする看護師さんに笑われて、恥ずかしい思いをしたのに。
岳人と別れたのが、不安でたまらない。
麻酔の準備をする看護師さんと、先生、袋が沢山下がってて、腕に管が巻かれ、
注射針が目に入ってゾクリとした。
「全身麻酔にしますね、……お酒は強い方ですか?」
その言葉に、もともとお酒好きなあたしは、反射的に即座に答えてしまった。
「……はい、強いです」
「分かりました」
……しまった、と思ったけど、もう遅い、注射針が皮膚に押し当てられて、
そんなにすぐに、意識を失うなんてないと思ったのに、
あっさりと、視界が暗転した。
真っ暗な闇に閉ざされた。
それなのに、どこかで自分の意識があった。
ごりごりとあたしのあそこの奥を、弄くられる不快感、
何かの衝撃に体が揺れる感覚。
確かに意識はないのに、回りが騒がしいのは分かった。
「……思ったより、大きくなっていたね?」
……先生がナニかを取り出して、あたしに見せた。
赤い塊を確かに見たような、そんな気がしたんだ――――――。