あたしの好きな人
第8章 新しい生命
そう誤魔化して、岳人と一緒に、新幹線に乗ったんだ。
実家に岳人と一緒に行き、お母さんに岳人を紹介する。
珍しく、今日は休日だったみたいで、思いきり部屋着の素っぴん。
「ああ、お母さん、えっとこの人は……っ」
何て言っていいか口ごもっていたら、岳人が思いきり、極上の営業スマイルで、
お母さんに頭を下げた。
「咲良さんとお付き合いしています、神谷 岳人です。急にこんな形でお伺いして、申し訳ないです」
岳人をまじまじ見るお母さんが、ハッとしたように、口を開いた。
「……ご免なさい、神谷さんてお父様があの……?優人さんじゃあ、ないかしら?」
……優人さん?
「はい、親父の名前です、お知り合いでしたか?」
「えっ、ええ、大学が一緒だったから……、懐かしいわ、やっぱり息子さんだから、少し似ているのね?」
「……似ていますか?」
あんまり嬉しくないんだろう、岳人が微妙な顔をしている。
「お母さん、取り敢えず、荷物置かせてね?」
玄関先でまだ会話してる様子の二人をほっといて、自分の部屋に荷物を置きに行き、
ダイエットマシンがでかてかと置いてあったため、しょうがなく、お母さんの部屋に荷物を置きに行った。
忙しいからゆっくりする、時間はない。
適当にお母さんの部屋に、荷物を置いて、すぐに階下に行こうと踵を返し、
机の上にあった何かが、ハラリと落ちて、それを拾った。
それは古びた一枚の写真だった。
一人は大阪のあの病院の理事長さん、確か周防さんだと言っていた。
若くて美形で、格好いい。
その隣にはお母さんが、男の子らしい赤ちゃんを抱いていて、その隣には、多分彼が、岳人のお父さん?
岳人に似た男の人が女の子らしい、赤ちゃんを抱いていた。
赤ちゃんは年が同じように、見えた。
……大学の頃の知り合いだと言っていた。
…………まさか。
…………………まさか、ね。
咄嗟にあたしは、その写真を上着のポケットに入れた。
「……咲良?岳人さんに上がって貰いましょ?」
「……すぐ出るから、ちょっと待ってっ」
急いで二人の元へと走ったんだ。