あたしの好きな人
第8章 新しい生命
岳人のマンションに行き、荷物を下ろして、久しぶりにランチでも食べに行く事になった。
懐かしい岳人の店に行き、ランチディナーを食べて、巽と従業員と話をして盛り上がり、
店を出た頃にはすでに、薄暗くなっていた。
何となく岳人と二人で、公園を散歩して、二人でベンチに座った。
「……なんだか、すっごく懐かしい、あれからもう、一年くらいたったんだね?」
「そうだな、俺からすれば……長い一年だったよ」
フッと甘く笑う岳人が、上着のポケットを探る。
それに気付かないあたしは、
「なんだか、久し振りに笑って、喉が乾いたな?」
「……何だよ?コーヒーか?」
無愛想になる癖に、すぐに立ち上がる岳人。
それと同時にケータイが鳴り、すぐに出る。
いつものように、首に挟んで会話する。
「……なんだよ、お前かよ、……帰ってるよ、まだ待て、俺も忙しいんだよ。……何だよ、何で俺がお前と……はあ?親父?……適当なこと言ってんじゃねぇよ?」
会話しながら、多分、コーヒーを買いに行ってくれる。
岳人は優しい。
……だけど、忙しいのに、あたしに気を使って、仕事だって忙しい癖に、
あたしを優先してる。
今のあたしには……
それがつらい。
だから……、
やっぱりあたしは、岳人の傍にはいられない。
いられないの……。