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え?元アイドルのお従兄ちゃんがわたしのクリフェラ係ですか!?

第7章 すれ違う想い

 体をふるわせて荒い息を吐《つ》くわたしの頭を、夕謡がやさしく愛撫してくれる。
 今夜もわたしは、夕謡にクリフェラを施されたのだ。

「気持ちよかったね、詩菜。今夜も可愛かったよ」
「夕謡……」

 夕謡はわたしのパジャマを整えると、部屋を出て行こうとする。わたしは彼の服を掴んで引き留めた。

「……詩菜?」
「夕謡……わたし」

 夕謡は足を止め、振り返ってくれた。

「わたしね、夕謡が好き……。好きなの」

 瞳をぎゅっと閉じて、言葉を絞りだす。わたしはついに夕謡に自らの気持ちを伝えた。

「詩菜、僕は……」
「だから、わたしも……夕謡に触れたい。気持ちよくなって欲しい。キスだって……くちびるにして欲しい」

 膝の上でこぶしを握りしめる。怖くて夕謡の表情を見ることができない。

「詩菜――僕は」

 夕謡はそこで言葉を止める。わたしは固唾を呑んでその先を待った。

「僕は、詩菜のクリフェラ係だ……」

 夕謡は何かを堪《こら》えるかのように、言葉を絞りだす。

「詩菜のことはとても大切だ。でも僕は、クリフェラ係なんだよ、詩菜」
「どういう、こと……」

 心の中を、すっと冷たい手で撫でられたような気がした。
 夕謡はわたしを好きなわけではない――そういうことなのだろうか。

「僕は、詩菜を気持ちよくさせてあげたい。でも僕はクリフェラ係だから、僕が詩菜に気持ち良くさせてもらうわけにはいかないよ」
「どうして……どうして!」

 わたしはついに顔を上げて叫んだ。感情が渦巻いて、止められない。

「好きじゃないなら、こんなことしないでよ! クリフェラ係なんて、辛すぎるよ……!!」
「……っ」

 少し間をおいて、わたしは言った。

「――出てって」

 夕謡がわずかに口を開きかけた。わたしはその先を聞くのが怖くて、さらに言い募る。

「出てって、出てってよ……!」

 手元の枕を掴んで、思い切り投げつけた。

「し――」
「出てって! はやく出ていってよ……!!」

 わたしは耳をふさいでベッドの上でうずくまる。もう、何も見たくない。聞きたくない。
 やがて。
 足音もなくそっとドアを開け、夕謡はわたしの部屋から出ていったのだった。

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