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ねぇ、私に好きを教えて…?

第2章 生きた屍

「…仕事辞めたのも、そのせい?」

「はい…、仕事場に来て怒鳴り出したんです。
それで同僚の方に呼ばれて、身体の痣を見てこれは立派なDVだからと教えてくれたんです。早く彼から離れないと死ぬよ、と教えてくれたんです。
後日、会社に迷惑かけてしまったので会社を辞めさせてもらって、こっちに逃げるように引っ越して来たんです。」

「…そっか。」

「…私のせいなんです。
彼も優しい人だったのに、私のせいで彼を変えてしまった。昔からそうだったんです。
私が男の人と仲良くしたから、女の人が怒った。
母も言っていました。あんたなんな産まなきゃ良かったと。
みんなみんな、私のせいで変わってしまうなら。迷惑になるのなら。
最初から誰も信用しない、人は人を裏切るんだと思って生きていれば…。
期待して生きることがないから、失うこともないと思って今まで生きて来ました。」

「…なのに、なのに。
1度、あんな人でも。人の優しさを知ってしまった私には、もう1人で生きていくことが難しくなってしまったんです。
それでまた、身体だけの関係を求めにあの日外を歩いてたんです。そして出会ったのが、佐山さんです。あの日、転んで痛くて動けなかった時に手を差し伸べてくれた佐山さんを誘おうかと思ってたんです。…けど、出来ませんでした。
優しい目に惹かれたんです。絆創膏で手当てをしてくれた手が優しくて惹かれたんです。
こんな優しい手をした人に、触られる資格なんてない。私は汚れているから。」

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