
夏夜の煙
第1章 1人で吸うか、2人で吸うか
「はぁ………」
勝負を受けたものの、彼女に「学校に来い。」なんて言う資格は俺にはないし、なぁ。
いつものように岬に車を走らせる。
コッチに越して来てから見つけた穴場の絶叫スポット。
嫌なことがある度、そこで叫んで日々の鬱憤を晴らすのだけれど。
今日はそこに先約がいた。
金髪ショートの若い女が、仁王立ちで岬の先にいた。
「ちっ、だりーなぁ。」
舌打ちをして、女が帰るのを、そいつのものであろうスクーターにもたれかかって待つ。
でもなかなか帰らなくて。
ずーっと細い足を踏ん張って、崖のてっぺんでタバコを吸っていた。
その妙な気高さが、何か俺を引き付けたんだ。
ビニールテープを跨いで、岩場を抜けて、その岬のてっぺんに近づいていく。
それにつれて、女がまだ17、8の若さであろうことがわかった。
何してんだ?こんなとこで……。
うわ、もしかして、自殺?
おいおいおいおい、ダメだろ、自殺は…。
しょうがねぇ、仮にも教師だしなぁ。
一応声でもかけるか。
どんどん近づいてるのに、女は気づかずに、タバコを吸ってる。
ったく…図太い女だなぁ…。
1度顔を拝んでやろうと、斜め後ろから見ると…。
金髪女は、今日付で俺の悩みの種になった、堀和奏だった。
マジかよ…こんな偶然ある??
目を見開く俺を全く気づかずに、堀和奏は大きく息を吸い込むと、タバコを海へ捨てた。
キラキラと闇夜の中で髪を光らせて。
そうして、きゅっと、薄い唇を結ぶと何かを決意したように見えた。
あ、これ。
やべぇんじゃないか。
飛び降りんじゃねぇか。
そう思った瞬間に声をかけてしまっていた。
