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夏夜の煙

第1章 1人で吸うか、2人で吸うか

「うぃーす。和奏、コーラ飲む?」



「おー。」



生温く頬を撫でる風。



白く立体的に浮かんでは、するりと消えてくタバコの煙。



最後にニコチンを思い切り吸い込んでから、指に挟んだそいつをアスファルトにグリグリと押し付けた。



それを横目に、ぴとり、と私の頬にコーラの瓶を当てながら座る潤。



「ポイ捨てすんなって。」



「へーへー。」



生真面目に私の吸い殻を拾いながら、



「オマエ最近吸いすぎじゃねぇ?」



そう呆れたように呟いた。



わかってるよ、そんなこと。



もうだいぶん前から、味なんてなくなって。



肺だって、締め付けられるように痛い。



それなのに、ぷはぁ、と肺に残っていた煙を潤に向かって吐き出して、



「そ?今日は まだ3本目だけど。」



と、なんでもない風を装った。



それを見抜いているのか いないのか。



「それが吸いすぎだっつってんの。」



潤は、私の残り少ないマルボロをケースごと奪いとる。



「返してよ。」



上目遣いで潤を見ると、目の前に可哀想なモノでもあるかのような目をしていた。



「なあ、和奏。そろそろ学校来い・・・「行かない。」



食い気味で答えると、はぁ、と潤がため息をつく。



その吐息からは、私のそれと同じ香り。



なんだ・・・自分も吸ってんじゃん。



バカバカしくなって、潤の手に握りしめられたマルボロを取り返して咥えた。



「おいバカ・・・っ!」



慌てる潤の手をひょいと交わして、火をつける。



すん、と吸い込んだ瞬間、肺がボロボロになっているのを感じた。



・・・こーやって不摂生してたら、早く死ねるのかな。



ねぇ、父さん。母さん。



すぐ逢いに行くからね。



「バカはそっちだ、ばーか。」



「はぁ!?」



叫ぶ潤を残して、スクーターに飛び乗った。

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