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バルコニー交歓

第2章 停電逢瀬

夜も更けた。
停電して真っ暗で何もすることがない。いつもならパソコンでゲームをしている時間帯。
早く寝よう。
その前に、彼女をおかずにオナニーしよう。

と、家の前で声がした。彼女の声だ。
え?いま何時?
もう夜半に近い。
なにかあったのかと慌てて外に出ると。
「家で懐中電灯が見つかりましたので、返しに来ました」
と彼女。
「明日で良かったのに」
と僕は、あきれた。
彼女は、思い立ったら即行動するタイプのようだった。

懐中電灯を受け取ると、彼女が
「おたくの家に忘れ物がありまして」
と言うので、家の玄関に彼女を導き入れた。

懐中電灯を逆さまに下駄箱の上に立てようとしたそのとき、僕の顔が瞬間、なにか柔らかいものによって塞がれた。
僕は弾みで懐中電灯を取り落とし、玄関は真っ暗に。
そのとき、僕の唇に、それは柔らかい、しっとりと濡れたものが、しゃぶりついてきた。
彼女の、唇だった。

「え?え?」
僕は、突然の唐突な出来事の意味が分からず、戸惑っていたが、やがて本能によって僕の唇は、彼女の唇を激しく強く吸い返していた。

チュルチュルチュルチュル~
激しい唇の吸い合いが一段落すると、彼女が舌を出し、僕が応じて出した舌に絡めてきた。
舌と舌が情熱的に絡み合い、ディープキスになった。
ジュルジュルジュル~
チュルチュルチュル~
ベチャベチャベチャ~
互いの唾が糸を引き合っているのが、真っ暗でも感じた。

しばしの情熱的な時が、終わった。
「奥さん…、これは、いったい?」
僕がわけを聞こうとするのを、彼女が指で僕の唇を押し止めてきた。
「毎日午前9時ごろ、バルコニーに出ますね。わたしが手を挙げたら、今から行きます、という合図です」
彼女は、さらっとそういうことを言うと、あっという間に去っていった。

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