
花と時計
第5章 花言葉
「はぁ、ごめん。
でもよく似合ってるよ」
「嘘です」
「よく見せて」
む、と、先輩を睨む。
指先が前髪に触って、横顔をなぞり、顎の下をくすぐられた。
思わず顔を下に向けようとすると、それを阻止され、逆に上げられる。
じっと見つめられると、私は、また、ジリジリと心臓が焼けるのを感じる。
彼は私に、触れるだけのキスをして、すぐに顔を離した。
そうして、高嶺の花の微笑みで、私を巧みに焦らすのだ。
「今日はおしまい。ね?」
彼の瞳に私は翻弄される。
彼の心情は未だに推し測れない。
近付いたのに遠く感じるのは、きっと、そのせい。
先輩、教えて下さい。
あなたが秘めている言葉を。
その意味を。
