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花と時計

第5章 花言葉


また彼は笑った。

「分かった」

快く頷いてくれたから、私は、自分の鞄から持っていたハサミをだして、先輩に渡した。

「どれくらい切る?」

「おっ、お任せします」

「じゃあ目つぶって」

言われるがまま、私は、目をつぶった。

ハサミが前髪を切る感触と音が鮮明に感じる。

先輩は手慣れたように数度、ハサミをいれて、最後、私の顔についた髪の毛を軽く払った。

「開けていいよ」

許可がおりて、目を開ける。
いつも薄暗い視界が、開けていて明るい。

私は、手で前髪の長さをはかった。
手が前髪の先に触れたのは、眉毛からだいぶ上のところだった。

「こっ」

私は予想以上に露出したおでこを手で隠し、先輩に抗議した。

「これは切りすぎです!」

先輩は、息も出来ないくらいに笑っている。

「先輩!」


こんなところでふざけるなんて!


怒る私に、彼はようやく収まってきた笑いにため息をつきながら言った。

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