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花と時計

第6章 I fall in love with unknown



「花来さんって、よく、夢咲先輩と一緒にいるよね」


そう私に言ったのは、同級生の森さんだった。

その時、私と彼女は日直の最後の仕事である教室のゴミだしをしに、中庭のゴミ置き場に向かっていた。

森さんは誰にでも気さくで、以前からよく話しかけてきてくれていたけれど、私が前髪を短くしたのをきっかけに、何かと世話を焼いてくれたり、近くにいてくれたりするようになった。

「そう、ですか?」

だけど、タメ口には抵抗があって、私は変わらず、敬語で話している。

「私達よりは一緒にいるよ」

森さんは、ゴミ袋を手に持ちながら蹴飛ばす。

「あの先輩いい話きかないけど、大丈夫なの?」

「たぶん」

「たぶんって、花来さん……」

分かりやすく呆れる彼女に、私は取り繕った。

「先輩は優しいです」

ふぅん、と、彼女は鼻をならした。

「好きなの?」

「え?」

「先輩のこと」

私は考えた。
他人を好き嫌いで分けたことがないから、森さんの質問の意図が分からなかった。

「憧れてはいますけど」

「……あれに憧れるのも不思議だけど」

そうだなぁ、と、彼女は空を仰いで、言った。


「恋してるの?」


「こっ」

唐突な爆弾発言に、顔が火照るのを感じながら、私は首を横に振る。

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