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花と時計

第6章 I fall in love with unknown


「先輩は私の大切な人です。
もう傷ついてほしくない。
なのに私は……私も、あなたを傷つけてしまう。
私は、結局、逃げてしまうんです」

私も、彼を傷つける有象無象と同じ。
いや、それよりもタチが悪い。

「私は辛い。
きえてしまいたい……」

自分の嗚咽の隙間から、先輩のため息が聞こえた。

「依子」

彼の手が、私の手を取って、下におろす。

「君みたいな人に、俺は今まで会ったことがないな」

先輩は私の濡れたまぶたに口づけた。
目を開けると、滲む視界の先で、彼が私から離れていく。

「先輩」

「もう終わり」

背中を向けて言われた言葉は、間違いようもなく拒絶だった。

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