テキストサイズ

花と時計

第7章 初恋の君


夏休みに入って、私は実家に帰ることになった。
母が恋人と長期の旅行に行くそうで、その間の留守を頼まれたのだ。
母がいないのならよし、と、私は彼女の頼みを受け入れたのである。

だけど、問題が発生した。

久しぶりに帰宅したのはいいけれど、家の中は香水や化粧品のキツい臭いが染み付いていて、窓を開けても換気されない。

このままでは夏休み中に病気になる。

そう思った私は、お供に勉強セットと本を連れて、カフェ巡りをすることにした。

夏休みにひとりで出かけるのも、外で時間を過ごすのも、初めてのことだ。
初体験の夏休みを想像して、私はわくわくした。
前髪を切ったら、気分も明るくなったらしい。


以前、先輩に買ってもらった服を着て、歩きやすいスニーカーを履いて、私は家を出た。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ