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花と時計

第2章 高嶺の花の香り


私は、全寮制の花園高等学校に進学した。

実家を出られるし、花園高校には成績優秀者の学費が免除される制度があったからだ。
1年生は入試の時の点数だが、2年以上からは、進級前の成績から、優秀者が決められる仕組みになっている。
自分で言ってはなんだけど、私の成績はずっと優秀な方だったし、学校のレベルを考えても、私がその制度の利用条件をクリアするのは容易だった。

ただ、問題がひとつ。

成績優秀者に選ばれた生徒は、講堂で行われる全校集会で表彰されるのだ。


心を硬い殻で守っている私だけど、恥がないわけじゃない。

私と一緒に名前を呼ばれて登壇した2人が、制服である白いブレザー、白いセーラー服を着こなしているのに比べて、私は全く似合っていない。

腰まで伸ばしっぱなしにしていた髪は、進学に合わせて肩甲骨あたりまで切ったけれど、前髪だけは、母の呪いもあってか、結局、目を隠せる長さで揃えてもらっている。
それが純白のセーラー服と相反しすぎているのだった。


校長先生から振り向くように促され、振り向く。

劇場のような造りになっている講堂では、みんなの顔の動きや口の動きから、目をそらすことが出来ない。


恥ずかしい。
はやく列に戻りたい。


私は視線をさ迷わせて、同じところを見ないようにした。

肌の色と制服の白と髪の黒。
視線に合わせて色が流れていく。


ふと、止めたその先に、私は、黒ではない髪の色を見つける。


校則では、髪色を黒にするように決められている。
だというのに、私が見つけた色は、青みがかった暗い灰色だ。

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