花と時計
第8章 震える蕾
言葉を選んでもらったのはいいけれど、あまりにも遠回しだった。
「ダメって?」
首をかしげる私に、彼は唸りながら、また探して、言う。
「俺がよりこのこと、好きって言ってもダメかって、こと」
彼の『好き』の意味が私には分からない。
「どういうこと?」
「だから」
彼は私に近づいて、私の手を取った。
昼間よりも熱いのは、どうして?
「俺と付き合うのは無しなのか、って」
意を決した表情に、私はようやく、彼の意図を理解した。
恋人は先輩でなければいけないのか、自分は選択肢にないのか、と。
私は握られた自分の手を見つめながら、首を振った。
「わ、私は、せ、先輩とお付き合いするつもりなんかないから」
「でも、好きって気持ちが憧れじゃないって分かったら、いつかそうなんだろ?」
「あ、ありえないよ」
「よりこ」
両肩を掴まれ、反射的に顔をあげてしまう。
「俺、ずっと好きなんだよ、よりこのこと。
初恋ってこんなに長く続くんだってくらい、今までずっと」
「初恋……?」
私は思わず繰り返していた。
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