堕ちる
第1章 1
勝手に喜ばしい未来を想像して、勝手に盛り上がってしまっていることに気づき、苦笑する。
まだ、そうなるとは限らない。
そうなるためには、江藤さんの求めに応じられる男でいなければならない。
些細な頼み事一つでも、結果はまるで変わるかもしれないのだ。
暖房をつけようと部屋の中を見回すと、リモコンはすぐに見つかった。
ベッドの上。
しかし、同時に、そのすぐ横に置かれている物の存在に気づくと、僕の身体には緊張が走り、動くことが出来なくなってしまった。
江藤さんの寝間着と思われる服が脱ぎ捨ててあり……それと一緒に、ブラジャーのような物を見つけてしまった。
ブラジャーと言われて一般的に思い浮かべるものとは、形状も見た目から伝わる質感も少し違う。
よくわからないが、寝るときに着ける物なのだろうか?
とにかく、下着だ。
僕は、そのブラジャーのような物に目を奪われ、ドキドキと胸を高鳴らせながら、取り敢えずリモコンを掴んだ。
掴んだ位置から、右へ僅かに手を動かせば、それに触れてしまう。
江藤さんの、あの大きな胸を直に包んでいたであろうそれに──
込み上げてくる衝動に、僕は我を失いそうになった。
徐々に手が横に動いて行き、あと数ミリというところまで来てしまう。
少し触るくらい、いいじゃないかと思えた。
だが──
僕は邪念を振り切り、リモコンだけを引き寄せると、ベッドに背を向けた。
勝った──。
僕の理性が、邪な考えを退けたのだ──。
誘惑を断ち切ることに成功した僕は、自分の意志の強さと実直さに、誇らしさを覚えた。
ほんの一瞬の間──。
振り返った僕の目に飛び込んで来たのは、憮然とした表情で僕のことを見つめる、江藤さんの姿だった。
僕の中では、部屋に入ってから一分も経っていなかった。
しかし江藤さんの背後にある小さなテーブルの上には、オレンジ色の液体が入ったグラスと、皿に並べられたクッキーが置かれており──
実際にはそれだけの時間が経過していたことを証明している。
江藤さんが部屋に入って来たのにも気づかなかった。
それだけ夢中になっていたのだ。
僕は頭が真っ白になり、何かを言ったり、考えたりすることも出来なくなってしまった。
まだ、そうなるとは限らない。
そうなるためには、江藤さんの求めに応じられる男でいなければならない。
些細な頼み事一つでも、結果はまるで変わるかもしれないのだ。
暖房をつけようと部屋の中を見回すと、リモコンはすぐに見つかった。
ベッドの上。
しかし、同時に、そのすぐ横に置かれている物の存在に気づくと、僕の身体には緊張が走り、動くことが出来なくなってしまった。
江藤さんの寝間着と思われる服が脱ぎ捨ててあり……それと一緒に、ブラジャーのような物を見つけてしまった。
ブラジャーと言われて一般的に思い浮かべるものとは、形状も見た目から伝わる質感も少し違う。
よくわからないが、寝るときに着ける物なのだろうか?
とにかく、下着だ。
僕は、そのブラジャーのような物に目を奪われ、ドキドキと胸を高鳴らせながら、取り敢えずリモコンを掴んだ。
掴んだ位置から、右へ僅かに手を動かせば、それに触れてしまう。
江藤さんの、あの大きな胸を直に包んでいたであろうそれに──
込み上げてくる衝動に、僕は我を失いそうになった。
徐々に手が横に動いて行き、あと数ミリというところまで来てしまう。
少し触るくらい、いいじゃないかと思えた。
だが──
僕は邪念を振り切り、リモコンだけを引き寄せると、ベッドに背を向けた。
勝った──。
僕の理性が、邪な考えを退けたのだ──。
誘惑を断ち切ることに成功した僕は、自分の意志の強さと実直さに、誇らしさを覚えた。
ほんの一瞬の間──。
振り返った僕の目に飛び込んで来たのは、憮然とした表情で僕のことを見つめる、江藤さんの姿だった。
僕の中では、部屋に入ってから一分も経っていなかった。
しかし江藤さんの背後にある小さなテーブルの上には、オレンジ色の液体が入ったグラスと、皿に並べられたクッキーが置かれており──
実際にはそれだけの時間が経過していたことを証明している。
江藤さんが部屋に入って来たのにも気づかなかった。
それだけ夢中になっていたのだ。
僕は頭が真っ白になり、何かを言ったり、考えたりすることも出来なくなってしまった。