ほんとのうた(仮題)
第6章 お気楽、逃避行?
「もう、やっと戻ってきた」
ファミレスのボックス席で俺を迎え、待ちくたびれたとばかりの真であったが。
「どうかした? 浮かない顔しちゃってさ。上手くいかなかったの、話」
モヤモヤとした俺の心情を察して、すぐにその意を訊ねてくる。
「いや……事情の方は、大よそ掴めたんだけどな」
確かに太田との通話で知り得たことは耳触りの良い話でなく、むしろ不快に尽きる内容であった。
だが今の俺がスッキリとしないのは、太田が最後に匂わせた部分による部分が大きい。
まさか……いや、気にし過ぎか……?
俺は真の向かいの席に腰を下ろしながら、一抹の不安を拭い去れないでいた。すると――
「ね、オジサン――」
「ん?」
「さっきは、ああ言ったけど。私の気持ちも、言わせてもらって――いい?」
「別に、いいけど……?」
「私は、まだ暫く――このままオジサンと一緒にいたいって、思ってるんだけどな」
「――!」
したいように生きる――それは、そんな、真らしく。それが俺にも許されるのかどうかはともかくとしても、そう言われたことが嬉しくないと言えば、それは大嘘になる。
暫くって――いつまで?
そんな愚問をグッと呑み込み。さて、それならどうするか。そんな風に、俺が頭を切り替えようとした時だった。
またしても取り囲む環境が、俺たちに迫ろうとするかのように――。
その発端は店内で耳にした、こんな一言から始まっていた。
「エッ? 天野ふらの――!」
その瞬間――真がビクリと、肩を竦めた。