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ほんとのうた(仮題)

第6章 お気楽、逃避行?


   ※   ※


 部屋に戻った俺たちが、まず初めにしたこと。それはパソコンでのネットへの接続(いまだスマホを持たない故に)、および『天野ふらの』『目撃情報』というワードでの検索であった。

 その結果として――。

「この画像って……今日の、買い物の時の?」

「やっぱり、そうか……そして、もう結構な話題になっているらしいな」

 SNSで投稿されたその画像は、既にかなりの拡散をみせているようだ。その勢いは、ネットニュースでもトップで取り扱われるほど。

 すなわち、ある程度は信憑性が高いと判断されているのだろう。件の画像は、真の立ち姿を右側より撮影したもの。

 ファミレスのカップルが話していたように、すぐ隣には顔の部分が真の陰に隠れている男の半身も映り込んでいた。言うまでもなく、それは俺自身なのである。

 それがいつ、どの瞬間に撮られたものなのかは、すぐに判明。真のド派手な格好は、すなわち太田や亜樹と遭遇していた場面。

 おそらく、期せずして笑い出した俺が、周囲の注目を集めてしまったタイミングだろう。

 服装も然ることながら、あの時の真はサングラスで顔半分を覆い隠している。それ故に存在が際立っていたとしても、正体を悟られることはなかろうと。それは、俺の油断だった。

 正面にいた太田たちは気づかなくとも、却って何気なく横目に眺めていた通行人の中にピンときた者がいたのかもしれない。

 実際その画像は、サングラスの隙間から真の横顔の目元までを的確に捉えている。

 そして問題なのは、単に今いる部屋からほど近い隣町において、真の存在が確認されてしまった――というだけには留まらない点。

 どうやら真も、気づいているらしい。

「オジサン……コレを、あの人たちが見たら?」

 それまでにない不安そうな顔で、真は言った。

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