ほんとのうた(仮題)
第6章 お気楽、逃避行?
あの人たち――と、その言葉を耳にする前に、俺の方には既に嫌な予感が生じていた。
そう――この画像から、現在の真の所在を確実に詳らかにできる奴らがいた。画像が撮影されているその場に俺たちと共にいて、真と同伴していたのが俺であることを認識している奴らが……。
殊に――
「太田のヤツ……たぶん、もうコレを見てやがるな」
不安そうな真のことを顧みることなく、俺は思わず呟いてしまった。
さっき電話で話した時の思わせ振りな言い方から、ほぼ確信していたのである。
「――!?」
その時――急に怯えたようにして、真が俺に縋りついた。
コツ、コツ、コツ――。
そうした原因は、部屋の外から聴こえていた、何者かの足音による――。
だが――
「……」
俺の胸に顔を埋め、じっと息を潜めた真の不安は、とりあえず杞憂に終わる。
その足音は、俺の部屋の前をあっさりと通過。その主が隣の部屋のドアを開き、その中へ消えて行ったことを物音で確認した。どうやら隣に住む学生が、帰宅して来ただけのようだった。
俺と真はふっと息を吐くと、脱力した身体を床へと横たえる。
「ああ、畜生……」
ほっとして呟くも、一時のこと。既に俺たちにとって、この部屋は落ち着ける場所ではないのだ。
とはいえ、無論今すぐに何者かが、真を追いここまで来訪するわけでもなかろう。それは些か、突飛な想像が過ぎる。
しかし問題なのは、その可能性はゼロとは言い切れなくなっていること。そして今後の成り行きによっては、その可能性は益々高まるように思えた。要は俺の対応と、太田の腹積もり次第となろうか。
太田の奴は、俺が連れていた若い女が現在世間を騒がせている『天野ふらの』であることを、(おそらくは)SNSの画像により知った(はず……)。