ほんとのうた(仮題)
第6章 お気楽、逃避行?
※ ※
時刻としては、その日が終わりかけている――夜中の午後11時47分。
俺は24時間営業のセルフのスタンドで、愛車(というまでの思い入れはないが)の軽自動車にガソリンを満タンまで給油していた。
作業を完了し運転席に乗り込むと、助手席の真が呆れ加減で、こんな風に口にしたのが耳に入る。
「けどさぁ……いくらなんでも、普通こんな夜中に旅立つかなぁ? どこに行くとかぁ、計画を立てたりしてぇ。色々と準備してからの方が、いいんじゃないのぉ」
幾分、間延びした口調は、既に眠気に襲われ始めている兆候かな。俺はそんな真に笑いかけ、このように言葉を返すのだった。
「真ともあろうものが、そんな些細なこと気にするのかよ。行き当たりばったりなのは、むしろお前の流儀じゃなかったのかよ」
それを聞くと、真も愉しげに「にっ」と笑みを零す。
「オジサンにしては、上等だ。では、真夜中の逃避行に――出発進行!」
真のその号令を合図として、俺はアクセルを踏み車を走らせてゆく。
宛てもなく目的も定かでない、そんな旅路が俺たちにもたらすものは、果たして――?
それでも年甲斐もなく、どこかわくわくしている、自分が確かにいる。
【第七章へ続く】