ほんとのうた(仮題)
第6章 お気楽、逃避行?
思春期のガキだった頃のように、俺の心臓がバクバクと音を立てた。
それは、そんな刹那である。
『オジサンのしたいように――しなよ』
――――!?
真に言われたその言葉が脳裏に浮かぶと、俺の中の見えない衝動を激しく突き動かしていた。
真のホントの唄って、どんなだろうな、とか……。
俺はそれを、いつか聴けたらいいな、とか……。
いや、どうかな……よく、わからない。だが、それでも、このままには、できないだろ? ――って、その想いだけは、捨てられなかった。
だったら――
「――オ、オジサン?」
驚いた真の声が、耳元に心地よく響く。
気がつけば俺は、その身体を強く抱きしめていた。
そして、全てのくだらない思惑をかなぐり捨てるようにして――俺は、言うのである。
「真――俺と一緒に、旅に出るか?」
「は?」
思いもよらぬその申し出に、流石の真も唖然としていた。
その反応にカッと顔を熱くし、恥ずかしさに耐えながら――俺は念を押すのである。
「嫌なら、別にいいけどなっ!」
すると、ギュッと強く抱き返し。
「うん、行く」
と、真は言った。