ほんとのうた(仮題)
第7章 二人の時間(とき)に
様々あったようでいて、実はまだなに一つ定かでないままに。無鉄砲と言われても抗弁しようもない、そんな旅立ちを決意することになった、俺と真ではあったが。
暫く車を走らせた時、真は何気にこんなことを訊ねてきた。
「今、方向としては、どちらへ?」
「まあ、北だな」
「とりあえず、どこを目指す?」
「うーん……そうだなあ。こんな場合は、やっぱり日本海じゃないのかって」
「は? なにそれ」
「街を追われた若い二人は、人知れず日本海を目指すものと相場が決まっている。演歌の歌詞とかに、ありそうだろ?」
「知らないし。つーか、どさくさに紛れて若い二人とかいって……。その発想も含めて、オジサンってさあ、やっぱ昭和の人だよねぇ」
「昭和の人って、なんだよ! 確かに昭和生まれだけども、言うほど昭和に馴染みはねーから。俺だってこの21世紀をハツラツと生きているわ!」
「ホラ、そーゆーの! ハツラツとか――イチイチ、チョイスする言葉が古臭いし」
「くっ……!」
俺としては清水の舞台から飛び下りる覚悟で、この旅に赴いているというのに。そののっけから、随分と人のことこき下ろしてくれるんだね、君は……。