ほんとのうた(仮題)
第7章 二人の時間(とき)に
おまけに――
「ふぁああ……車に乗ってたら、急に眠くなってきちゃった。もう遅いし、寝ちゃってもいいよね?」
こ、この女……俺だって、そろそろ眠いわい。
助手席の奴は、普通もう少しドライバーを気遣うものだろうが。もっと会話を振るとか――あ、いや。さっきみたいな会話なら、寧ろ静かにしててもらった方が……。
「わかった、わかった。好きなだけ、寝てていーよ」
呆れ半分に、俺が言うと――
「うん、そうするね。でも、その前に――」
真はそう言いながら、後部座席のバッグからなにかを取り出していた。
「コレ、お願い」
「なんだよ。わざわざ持って来たのか?」
真が手にしていたのは、部屋にあった古いCD。若い頃の俺が傾倒していたロックバンドのアルバムである。
その伝説的バンドの楽曲には、それまでにも真が興味を示していた。
俺はカーオーディオにCDを差し入れ、静かな音量でそれを鳴らす。
真はシートを倒しそっと目を瞑ると、子守唄代わりにその曲を耳にしているようだった。
そのまま暫くして、アルバムの楽曲も終盤に差し掛かっていた頃――。
「これ……なんて曲?」
不意に真から、そう問われていた。