ほんとのうた(仮題)
第7章 二人の時間(とき)に
※ ※
途中で立ち寄ったサービスエリアにて、少々の仮眠を取った。それから、白々と明けかけた朝の陽射しを照り返すハイウェーを、車はひた走る。
現在無職の中年男と失踪中の超人気歌姫。その奇妙な組み合わせの逃避行は果たして、とんだ珍道中になるものか――それとも?
「いけー! ぶっ飛ばせー!」
俺とは異なり十分な睡眠を得た真は、とにかく元気だ。ハイテンションに叫ぶと、前を行く車を追い越せとばかりに、窓から拳を振っている。
だが、それは少々無理というものであって……。
「ああん……また抜かれたぁ」
ビュンと風を煽り瞬く間に俺たちの横を走り去ったのは、真っ白なボディーのスポーツセダン。それを皮切りにして、何台もの車が次々に俺たちの軽乗用車をぶち抜いていった。
真はその都度、口惜しいとばかりに俺を急き立てている。
「オジサン、この車。もっとスピード出ないわけ?」
「十年落ちの軽に、無茶をさせるな。お前こそ、なにムキになってだよ?」
「だってぇ……後ろから来たのに先に行かれるのは、やっぱり癪(しゃく)なんだもん」
なんか、超有名な時代劇の主題歌っぽい発想だな……。
「まあ、安全第一……だろ?」
途中に欠伸を挟みながら、そう言うと――
「もう! ホント、呑気なんだから」
真は幾分と呆れた目つきで、そんな俺を睨みつけた。
やはり真は、俺とは違う生き物だった。俺はそんなことを今更、思う。