ほんとのうた(仮題)
第7章 二人の時間(とき)に
真が寝てしまった、その後。車を走らせる俺は、なにやら色々なことを考えていたように思う。
俺は一体、なにをやっているのだろう。と、そんな内省じみたことは今更、なんら興味を呼ぶものではないから省略させてもらうにしても。
なぜ真が、俺と一緒にいるのか。その意味は、もう一度ちゃんと考えてみたいと思った。
それは――偶然につき、必然とはなりえない。増してや、運命とするようなロマンなど、この俺とは無縁だ。第一、役者不足も甚だしい……。
こうして真を連れ出し、なにかから逃げるように車を走らせ行くこと。それは俺の忘れかけていた――否、諦めかけていた衝動を、蘇らせるものであったとしても。
真にとって、それは迷いこんだ迷路の、その道の途中に過ぎないのではないか……。
そうだ――彼女の想いを知った今、やはり二人の出会いは“途中”でなければ、ならないのだ。
ならば、俺はその最中で、真になにを齎してやれる――?
それが傲慢であり、自惚れであることは百も承知している。だが分不相応にも真を欲しがってしまった俺は、どうしてもその部分だけは譲れないのだと思った。
「フフ……いよいよ、重症じゃないかよ?」
俺は自嘲気味に笑んで、夜中の一本道を前にアクセルを踏み込んでゆく。