ほんとのうた(仮題)
第1章 孤独(ひとり)と逃避(ひとり)
※ ※
――ゴン! と、暗闇で星が輝くような衝撃が襲った。
「……っつ、てぇなぁ!」
そんな最悪な目覚めから、俺は新しい朝の訪れを知る。
しかし、目を開けた視界に飛び込んだのは――
「――うわっ!」
ブランと垂れ下がった、何者かの足である。
「な、なんだ……?」
飛び起きた俺は、ベッドの上の光景を目撃した。
「ああ……そ、そうか」
呟くと、俺は思わず頭を抱えた。
まだ名も知らぬ女は、豪快な寝相をもって白いシーツのキャンバスを彩っていた。床に寝ていた俺の頭部への一撃の主は、ベッドから投げ出された女の右足のようである。
結局、泊めてしまった……。
俺は呆れながら、寝癖でボサボサの頭を掻いた。
「……」
かけてやったタオルケットもはだけて、女は無防備な寝姿を晒していた。だが昨夜のそれとは異なり、その姿は俺に劣情を覚えさせてはいない。
女は口元によだれを伝わせながら、なんとも無邪気な顔でスヤスヤと眠り続けているではないか。
とりあえず、まだ寝かせておくか。
それは別に女を気遣うのではなく。自分の事情を、優先させたに過ぎない。彼女を起こして色々と問い質すにしても、まずちゃんと目覚めて混乱した頭の整理する必要があった。
――ピ。
俺はちゃぶ台の上のリモコンを手に取り、テレビをつけ画面に表示された時刻を確認する。
――【AM8:00】――
「ヤバい。もう、こんな時間――と」
慌てたのも束の間、俺はすぐに肩の力をカクッと緩めた。
そう、俺は今日から無職放免(?)の身。時間の心配なら、無用である。