テキストサイズ

ほんとのうた(仮題)

第10章 想い、知らされて



 真……?


 それは、どれ位の時間だったろう。

 目を瞑ったまま岩上に直立する真の姿を、眺めていたのは――。

 そう思うに至り、ほど無くした時――だった。



 ――――――――♪



 真の唄声は、まるで蒼空に囁き語りかけるようにして、静かで透き通るようなメロディーを奏で始めていった。

 そして、その時の光景は、まるで幻想かと見まがうばかりのものになる。


 あっ……⁉


 驚き、俺は見つめた。

 真が音色を発しゆく、その周囲を――

 雲の間より差した光が、真っ直ぐ照らし上げたのだ。

 それはまるで、舞台の主を選びゆくスポットライトのようで――。

 真の唄声は、密やかに鳴り響き――そして、すぐに終わった。

 短い、いくつかのフレーズは――明らかに未だ、完結の途上にある。

 それでも、俺は――確かに、その唄を――聴いた。

 それを、唄い――想いを、告げて――真は。


「ごめんね……今は、これだけなの」


 その言葉は、天高くへと向けられていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ