ほんとのうた(仮題)
第11章 頼むから
そんな話をした後ということもあって、真にしてみても一人で色々と考えることがあったようだ。それを邪魔するのが嫌で、俺はとりあえず一人で部屋を出てきた。
話の方は、まだ途中である。真の方が、俺の話に納得した様子は微塵もない。明日のことについても一応は話したが、果たして『付き合って』くれのるか。それは、微妙。
旅館の狭い通路を進むと、向こうから来ていた若い仲居が立ち止まり、通路を広く明けてくれる。それに「どうも」と軽く会釈をして更に進むと、やや開けたスペースに行き着いた。
窓から中庭の庭園を望める、そのような席に俺はドッと腰を落ち着かせる。
「……」
随分と、嫌な言い方をしてしまった……。
真の怒った顔や涙を思い浮べると、やや胸が締めつけられるような感覚を禁じ得ない。嫌われずに済むのなら、それに越したことはないのである。本音を言えば元も子もないが、俺だってまだ別れたくはないのだ。
じゃあ、なんで――と? そんなの、上野さんとの約束とか。いずれ真の方からあっさりと「バイバイ」されるのは、自分にとってこの上もなくダメージであるとか。挙げてみれば、それらの理由は身も蓋もなかった。
だから甚だ不本意ではあるが、俺は自分の人生というやつと向き合うことを決めた。結局は大人として、恰好をつけたかっただけなのかもしれないが、この際、大義名分などどうでもいい。
――ピ。
俺は携帯を片手に、昨夜と同じ番号に発信する。