ほんとのうた(仮題)
第11章 頼むから
真の複雑な感情の中で、最終的に勝ったのは、俺に対する失望であるのか。
「じゃあ、私にも言わせて――」
「ああ、なんだ……?」
やっぱ、来るのか……。
問いながらも、俺はその先の言葉を、なんとなく理解していた。
だから、俺は事前に一本の電話をしているのであり。
その相手とは、俺の弟であるのだ。
「偉そうに言わないでくれない。逃げてるというのなら、それはオジサンだって同じでしょ。お父さんや家のことが嫌で、今だって――逃げ続けているくせに!」
「……」
そう。その通りだ。結局は、そこに行き着く。だからこそ、それまでの俺の言葉には、一切に説得力がない。
黙した俺に対し、真は話を続けた。
「私とオジサンは、違うから? そうやって、言い訳をするの? そんなの私だって、最初からわかってた。だけど、だとしたら……私たちのこの時間は、一体なに? まるで、無意味だって、オジサンはそう言える?」
「無意味ではないさ。俺は真のお蔭で、変わることができそうなんだ――そう、思ってる」
「え……?」
「だが、まだはっきりとしない。だから、真――明日は、俺に付き合ってくれないか?」
「付き合うって、どこに……?」
やれやれ、仕方ないか……。
観念して、こう言葉を続けた。
「俺が、逃げ出して来た場所へ」
そして、俺は心の底から面倒そうに、苦笑するのである。