ほんとのうた(仮題)
第11章 頼むから
すると――
「――言い訳」
「ん?」
「オジサン、話をする前に、これは言い訳だって――?」
「ああ、それはな――」
俺はバツが悪そうに、髪を掻き――
「俺だって、単に一族やそれを取り巻く環境を煙たがって、逃げてきたわけじゃないって。そんなことを少しだけ、真にも知ってほしかったんだよ」
「そっか……」
真は抱えた両膝の上に顎を着けて、なにかを思慮したように畳の目を見つめた。
そうしてから――
「ね――ひとつだけ、訊いてもいい?」
「ああ、構わないが」
「その彼女と別れた後に、お父さんと仲直りしようとは思わなかった?」
「それは一度も、考えたことはなかったな」
「どうして?」
「喧嘩して家を出る時に、親父にこう言われたよ――」
俺は脳裏に刻まれたそのセリフを、なぞるように口にした。
「くだらん一時の感情で、自分の将来を棒に振る気か? 断言してやってもいい。お前はいつか必ず、この時のことを後悔することになるだろう」
「……」
「俺はその言葉を、認めたことはない。後悔なんかしてないと、自分に言い聞かせてきたから。だが――」
「だが?」
つまらない昔話に一心に聞き届けてくれている。真は僅かに首を傾げて、話の続きを促していた。