ほんとのうた(仮題)
第11章 頼むから
すると、真は暫く黙り。それから、その話の流れ上、最も気になる部分への興味を向けた。
「それで、その彼女との……その後は?」
遠慮気味に訊ねた眼差しに、俺はあっさりと――こう答えた。
「別れたよ」
「えっと……それは、手術が上手くいかなかった……ということ?」
更に気を遣ったような言葉に、少し申し訳なく思い、俺は――
「いや、手術は成功したんだ」
と、その顛末を語ろうとした。
「ともかく、手術は無事成功。すると、その一年後には普通の生活を送れるまでに、彼女は回復することができた。しかし、それから更に一年後――俺たちは話し合い、双方が同意の上で関係に終止符を打つことを決めることになった」
「それは、なんで……?」
「さあ、自分でもはっきりとはわからない。だが、手術が成功した時に、俺たちの間に一つのピークが訪れていたのは確かだと思う。そして、その後の日常の中で当たり前の日々を、その時以上の喜びとして噛み締めることができなかった――つまり、そういうことなのかもしれない。まあ、いずれにせよ、若かったということだろうな」
俺はそう言って、照れ隠しに笑って。
いつの間にか、まじまじと俺を見つめている真に――
「人生なんて、そんなにドラマティックにはいかないってことだよ」
と、そう言い。その、昔話を終わらせていた。