ほんとのうた(仮題)
第12章 城崎家の人々
流石にある程度は、俺の方が自制せねばなるまい。あの親父の偉そうな講釈を思い浮べるだけで、これでもかというくらいに憎々しいが……まあ、そこは忍耐だ。
ともかく、このミッションを終え、少しでも快く真を送り出してやりたいところ……。
その真の様子について話すのなら、この日はなんとなく淡々としていた。昨夜、この旅の終了の報せと同時に、彼女にははっきりと「帰れ」とも告げている。
なので、もっと別の反応を予期していただけに、その意味では意外だ。
俺の話を受け入れた恰好で、本日こうして同行することは了承している。この件を「帰れ」と言ったことと分けて捉えている辺りが、真らしい優しさであるようにも思えた。
だが、それだけに先の展開は予想し難い。仮に俺が自らの人生で置き去りにしてきた事象に、それなりの落とし前をつけられたとして――否、その着地点は現在のまで、全く見えてはいないのだが――であるから、仮に。
果たしてそれを見た真が、それを自分の在り方と重ねて前向きになるきっかけとしてくれるものか。そんな保障は、どこにもなかった。そもそも保障なんてものは、なに一つとして用意されてはいないのだ。
最悪のケースでは俺と親父が物別れに終わることで、それが暗に真に対して負のメッセージになってしまうことだって十分に危惧される。
「どうかしたの、オジサン。難しい顔しちゃって」
窓側に頬杖をつき、真は欠伸しかけた顔で訊ねる。心なしかその流し目が、物憂げにも見えた。
「いや、別に……」
俺は心の中の緊張を少し惚けて、気の抜けた返事。
まあ、なるようにしか、なるまい……。と、思った刹那。
――プルルル!
「――!」
俺の携帯が、着信を告げた。