ほんとのうた(仮題)
第12章 城崎家の人々
車を近くのコンビニ駐車場に入れ、俺は急ぎその電話に応じた――のだが。
「オ、オイ……なんだって、そんなことになったんだよ?」
その数十秒後。俺はクラクラと目まいがして、思わず手でこめかみの辺りを押さえていた。
電話をかけてきたのは予想通り拓実であり、そこに問題はなかった。大きく予想を裏切っていたのは、そこから聞かされた話の内容である。
『兄さん、そう邪険にしなさんな。一応は皆、家族じゃないか』
「そういう話じゃねーから。言ったよな――俺は親父と話したいだけだと。それなのに、なに余計なことしてくれてんだよ!」
『酷いなあ。僕だって、これでも色々と気を回したんだよ。会長(オヤジ)の前で裕司兄さんの名を口にすることだって、当家では長年のタブーとされていたくらいなんだから』
「まあ……そう言われると弱いが、しっかし、それにしても……参ったなあ」
『今更、ドタキャンなんて勘弁してよね。そんなことしたら、もう一生こんな機会ないと思ってほしい』
「それは、わかってるが……しかしな」
『では、時間厳守でお願いします。色々と言ったけど、兄さんと会えること自体は楽しみにしてる。一応はね――』
それで、拓実との通話が終わった。
一応とは……なんとも、アイツらしい。まあ、最初から拓実のことはいいのだが……。
「オジサン――電話、なんだって?」
「うん……ともかく、行ってみようか。少し、予定は狂ったけどな……」
「……?」
答えた俺の横顔を、真が不思議そうに眺めていた。