ほんとのうた(仮題)
第12章 城崎家の人々
真のことはとりあえず、いいとしよう。いや、どう見ても良くはなさそうであるが、そう思わないと、気が滅入るばかりだった。実際に真は、これから顔を合わせる面々とは、全くの無関係であるのだし……。
顔を合わせる面々――と、表した当たりが、先の電話で俺が頭を抱えた一因となっている。調度それを憂鬱に思ってた時に、真にこう訊ねられた。
「このお店で、待ってる人が――オジサンのお父さんなの?」
「あ、いや……まあ、そうなんだが。どうも待ってるのは、親父だけじゃないらしい……」
「そっか。じゃあ、お母さんも?」
「ああ――それプラス、兄弟が二人と――何故だか知らないが、その嫁たちまで追加された」
「へえ。じゃあ、一族が勢揃いだね」
真は言うと他人事みたいに、ニッコリと笑った。まあ、他人事だけども……。
一方でその状況を詳らかにしている俺の方は、決して軽くない頭痛に襲われ始めていた。
「全く……悪趣味な話だぜ」
「どうして? 皆、オジサンに会いたくて集まってるんじゃないの?」
「ある意味では、そうだろう。家を飛び出た次男坊の末路……その落ちぶれた姿でも、見学しに来てるんだろうよ……」
「え、まさかぁ」
そう言った笑いかけた真に、俺が引きつった笑顔を帰す。すると――
「え、マジ? オジサンの家族って、そんな人たちなの?」
「さあ、な……」
なにせ、ほぼ二十年ぶりのことである。
この高級料亭で待つ、とある一族の面々。その見えないプレッシャーを感じながら――
「ああ、畜生――じゃあ、行くぞ」
俺はそう吐き出すように言って、真を伴い重い足を一歩づつ踏み出して行くのだ。