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ほんとのうた(仮題)

第12章 城崎家の人々


 仮にもこの家に嫁いだのならば、彼女たちもまた城崎家の一族である。だから、その家が嫌で飛び出した俺にとっては、本来どこまで行っても相容れない人々、であるようにも感じてしまう。

 その様に暫し、外野(失礼だが)とのやり取りに気を取られていたから、仕方ないいえば、そうなのかもしれない。この座敷に入って以降はずっと、誰と話していてもその動向には留意していたのだが、この時は完全に油断が生じていたのだ。

 まるで、その一瞬を狙ったかの、如く――

「裕司――お前、今はどうしているんだ?」

 俺の親父――城崎仁造(じんぞう)が、満を持して口を開いている。

「――え! ――っと」

 端的でありながら、急所を的確にとらえたような問いに、俺はぐっと息を詰まらせてしまう。ほんの僅か前、臆さずに、と心に秘めたものを台無しにされた気分だった。

 瞬時に背中に、冷や汗が滲む。まるで封印を説かれたように、開かれたその口と目。擦れた低い声とどんよりと冷めた眼差しが、俺をじりじりと責め立てるように……。

 くっそ……ここまで来て、質問一つに、なにをビビッてんだよ……。

 話をするのであれば、当然こんな話にもなる。その覚悟だって、していたつもりだ。だが如何せんいきなり過ぎて、軽く頭の中身がどこかへ飛んでしまっている。果してどう答えるべきか……。

 と、そんな時だ。

「――!」

 くいっ、と掴まれた。右腕の肘の辺りだ。そして――

「平気……?」

 ポツリと囁かれた吐息のような言葉が、俺の耳に届く。

 ふぅ……やべえ。これ以上、カッコ悪いとこ見せらんねーよな。

 背後からのエールに感謝。そして気持ちを立て直して、俺はとりあえず答えるのだ。

「齢、四十を迎え――現在の俺は、無職だ」

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