ほんとのうた(仮題)
第13章 あとは終わりゆく、だけ?
色々と思うところがあった割には、俺が親父に言ったことといったら「酒を飲もうか」と、たったそれだけ。
逆に考えればそれだけのことを伝えるのに、二十年近くの年月を費やしてしまった。
だが、別にそれでいいのだと思う。そうできるまでに、必要な時間だったのかもしれない。
「じゃあ、帰るか」
俺は真に言うと、料理を振る舞われるのを待たず、料亭を後にしようとする。
そうした時、俺に一人ずつ近寄っては、ひそひそと話しかける、城崎家の面々がいた――。
「裕司、これからはせめてお正月とお盆くらい、顔を見せに来るんだろう」
そう言ったのは、俺のお袋――城崎多恵だ。
「え、うーん……どう、かな?」
不意の問いに、俺は期せずして宙を見つめる。
関係は幾分回復したのかもしれないが、別に修復したわけではないから、答えに窮するのだ。
俺が黙っていると――
「それはそうと、そっちの元気な娘さんは、母さんに紹介してくれないのかい?」
あっさりと話題を変えてくれたのはいいが、いずれにしても答え難いことにかわりはない。
「ああ、うん。母さん、悪いけども……」
「なんだい、けち臭い子だねぇ。随分と若いけれど、こんな場所にまで連れてくるくらいだから。お前の彼女なんだろう?」