ほんとのうた(仮題)
第13章 あとは終わりゆく、だけ?
「ハハ、まさか――」
俺は思わず苦笑を浮かべ、こんな風に言う。
「あのね、母さん。この世の中ってものは、母さんが考えてるより、もう少しだけ複雑なのかもしれないよ」
「……?」
きょとんとした顔に、「また今度」と目配せして、呑気なお袋との会話を、俺はとりあえず終えていた。
続いて俺を追って来たのは、意外なことに兄貴である。城崎喜市は心底、迷惑そうに顔をしかめながら、俺に話しかけてきた。
「オイ、待て。お前、本当に仕事はどうするつもりだ?」
「いや……まだ別に、考えてもないけど」
そう答えた俺を見て、兄貴は更にこれでもかと顔を歪める。そして舌打ちをしつつ、実に仕方ないといった感じで、こう話した。
「現場の一作業員としてなら、世話をしてやらないこともないぞ」
だが――
「断る」
「なっ、お前……人がせっかく」
俺が即座に断ると、兄貴は顔を真っ赤にする。
まあ、兄貴なりに歩み寄ってくれた、のだとは思う。が、やはりそれは――
「兄貴、それは余計なお世話――だろ?」
笑ってそう返した俺を、まじまじと兄貴は見返し。
「だったら、少しはしっかりしろ。この、バカ次男が」
呆れたようにそう吐き捨てると、踵を返した。