ほんとのうた(仮題)
第13章 あとは終わりゆく、だけ?
その兄貴と入れ替わるようにして、今度は弟の拓実が呼び止めて来る。
「ねえ、兄さん! 本当に帰っちゃうの?」
「そう言っただろ。拓実、今回は色々と世話になったな」
「それはいいけど。結局、その甲斐はあったのかい? なんか今一つ、釈然とはしないなあ……」
「さあ、俺もよくわからん。が、少なくとも気分は幾分とスッキリしたよ」
「まあ、ね。喧嘩されるより、ずっとマシなのは確かだ。それは、それとして――」
拓実はそう言いながら、ふと俺の隣りを見やった。
「なんか、その娘――微妙に見覚えがあるような、気もするんだけどね……?」
ギクリ!
「ま、まあ、そういうことだから。縁があれば、またいずれ!」
「あ、ちょっと!」
怪しむ拓実を残し、俺はそそくさと真を連れ、その場を後にしていた――。
かくして、俺は自らに科した『課題』を、一応はクリアーした格好である。と、そう言ってしまえば、些か語弊がある気もするが……。
なんと言うべきが、正直に言って、かなり拍子抜けした感は確かに漂う。それでも終えてドッと脱力していることから、かなりの緊張状態を強いられていたのもまた確かだった。
それを鑑みるに、やはり俺にとってはそれ相応の大きな『課題』であったらしく。
傍から見たのなら、二十年という月日を棚上げしたようで、愚かしく映るのかもしれない。こんな簡単なことを、妙な意地で先送りにしていた。俺の中にも、そんな想いは過る。