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　俺は一人、部屋に戻った。

「……」

　この部屋に、一人でいることは当たり前のこと。ほんの少し前までは、そうだったはず――なのに。

　すっかり傾いた太陽が、カーテンを開け払っていた窓から、容赦のない西日を差しこませていた。それがフローリングの床に、俺の影を長く伸ばしてゆく。

　おっ、この部屋って意外と広いじゃねーか。なんて、ふと思ったりしてみた。

　当たり前のように、一人である。そう、これが当たり前なのだと、頻りと自らに言い聞かせた。だが、その効果は推して知るべし、か……。

　俺は脱力したように、ふらりとベッドに倒れ込んだ。そうすると、真の残り香が、ふわりと鼻腔を擽ってくる。

「……」

　明らかに無理をしていた。それが、さっきまでの俺の態度。四十の男としての体裁を守ろうと、なんとか平静を保ってみせた。輝く世界に、真を送り出してやらなければならなかった。

　馬鹿らしい。そんなことしたって、誰も褒めてなどくれないのに……。

「ああっ……明日からは真面目に職探ししねーと、このままだと本当に野垂れ死ぬぞ」

　発破をかけようとした自身の呟きに、更に追い込まれている。それが死ぬほど面倒くさく感じられて、本当に駄目な人間になってしまいそうだった。