ほんとのうた(仮題)
第14章 (仮題)
季節は巡り秋が深まりゆく頃の、とある休日。
「なんだよ? 設定は、これでいいはずだろ……」
住み慣れたアパートの自室で、俺はテレビに向いながら、そんな独り言を頻りにつぶやいていた。手にした真新しいリモコンをアレコレと操作しながら、焦りが募る――が。
「おおっ、やっと映った!」
ようやく変化の生じた画面を前に、俺はホッと胸を撫で下ろしている。
「ふう……なんとか間に合いそうだ」
目当てのチャンネルに合わせ時刻を確認すると、開始まであと五分の猶予が残されていた。
この日、朝からせわしなく行っていたのは、有料の衛星チャンネルのアンテナやチューナーの設定やら接続やら、とにかく俺の苦手な作業である。
今まで見向きもしなかった有料放送に慌てて契約を果たしたのは、たった一つのプログラムを見届けるためなのだ。
それは昨夜に偶然見かけた、こんなネットニュースに端を発している。
『天野ふらの、失踪後初となるライブで重大発表か!?』
そのライブが生中継されるのが翌日だと知って、今こうしてそれを見届けようと準備を整えたところだった。