ほんとのうた(仮題)
第14章 (仮題)
重大発表というのが、些かマスコミで意味深に取り上げられているよう。しかしながら、俺からしてみれば、それはなんとなく察しがつくような気がしていた。
まあ、ともかく――
「真……せいぜい元気な姿を、拝ませてもらうからな」
あの一件以来、初となる公の舞台。俺は期待を胸にして、その登場を待った。
そして、ライブ中継が始まる。
『みんなぁー、待たせてゴネンねーっ! 私、みんなの前に、帰って来たよおー!!』
うわああああー!
真――天野ふらの、の一言で一気に盛り上がる会場。ライブはそうして幕を開けていた。
その後、(俺には馴染みのない)天野ふらののヒット曲の数々を以って、次々に満員の会場を魅了してゆく様が、テレビの前の中年男さえも釘付けにする。
「スゲェんだな……やっぱ……」
俺はポカンと口を半開きにして、その映像を見つめていた。今更ながら、彼女が人気歌手であることを思い知っている。いや、恥ずかしながら本当に今更なのだとは思うけれど……。
画面の中の『天野ふらの』は、とても生き生きと躍動していて、その姿を見ることができただけでも、俺の中には一定の満足を得た感覚が生じた。
しかしながら、俺の心の片隅には、それ以上のなにかを期待する想いが確実にあり。
そして、それは――ライブが中盤を過ぎた頃、であった。