テキストサイズ

ほんとのうた(仮題)

第3章 異常なる日常で


 ズルズルッ、ズルン!

「……」

 真が大盛りのチャーシューメン(味噌)を豪快に啜る音が、逆に俺の食欲を奪ってくれているようだった。

 それにしても、コイツよく食うよなあ……。

 思わず感心。昨日の牛丼の食べっぷりの方もどうやら、行き倒れ寸前のだったことだけが原因というわけではなさそうだ。今朝も今も、その旺盛な食欲はバッチリ健在である。

 身体のどこにそれだけの量が入るのか、かなりの不思議。真のスタイルの良さときたら、パッと見でもわかるほどだ。

 ここで、少し余談――。

 よくテレビでモデルなんかが「私、スゴイ食べますよー」とか「スタイルの維持? 特になにも気にしてませんけど」なんて言ってるのを耳にすることがあった。

 その度に俺は「ハッ、そんなわけねーだろ」なんて、独り言を口にしたりする。実際は食事制限とかエステとかホットヨガとか、必死にやってんだろと思っているからだ。

 だがこうして、真という実在の芸能人を前にしてしまえば、その考えは改めなければならないのかもしれない。決して全ての人がそうではなかろうが、やはり神に与えられし素養を備える者は確実に存在しているようだ。

 例として挙げたモデルのようなイメージ、とはやや異なる。どこか瑞々しくハツラツ(これってオッサンくさい言い回し?)としていて。単に細いだけでなく芯が一本通ったような、均整のとれた肢体であるように感じさせた。

 あ、ヤバい……なんか、身体だけをじっと見ちまった。

 自分の視線を若干嫌悪すると、とりあえず俺もラーメンを啜る。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ